次に、「外物之大事」、「上意之大事」の太刀目録を掲げる。後述の「奥伝・奥居合」の太刀名義と比較されたい。  外物之大事   行 連   連 達   遂懸切   総 捲   雷 電    霞   以上六本  上意之大事   虎 走   両 詰   三 角    四 角    門 入    戸 詰   戸 脇   壁 添   棚 下   鐺 返   行 違   手 内   輪 内   十文字   手離剣   以上十五本  「外物之大事」のうち、現在の奥伝・奥居合の太刀名義に見ることができないのは、「遂懸切」「雷電」「霞」の三つであるが、「遂懸切」は「外物之大事」「上意之大事」が統合されている時期の伝書には存在しており、現在夢想神伝流の一部に伝承される「追掛斬」と同様であろう。「雷電」「霞」はすでに述べたとおりである。  「上意之大事」のうち、伝承されていないと思われるのは「風返」「手之内」「輪之内」「十文字」の四つである。残念ながら、似たような太刀名義も存在しない。  一方、夢想神伝流に伝承されている奥伝・奥居合のなかで、長谷川英信流の「外物之大事」「上意之大事」に見ることができないのは「信夫」「袖摺返」「両士引連」「請流」の四つである。「信夫」は「夜之太刀」、「袖摺返」は「賢之事」、「請流」は「弛抜」という太刀名義で後期の伝書に見ることができ、「両士引連」も共に存在している。  「請流」は大江正路の創始によるものであるとする説があるが、それよりも先に存在していたため、おそらくは若干の工夫を加えたものだと推測される。  残る「極意之大事」は、心法的技法であるため、口伝される場合が多かったようであり、現在ではやや判然とはしないが、伝書類・口伝等から、そのおおよそは知ることができる。 極意之大事 暇乞  自分が客として訪問し、相手が送ってきたとき、隙を見てこじりにて突き倒し、そのまま突く。 獅子王剣  業ではなく、心を丈夫に備えることである。 獅子洞入  門の内外に敵がいる場合、右手で太刀を担ぐように、左手で脇差を下段に構え、上からの斬撃、下からの斬撃に応じる。 地獄捜  真っ暗な状況で鞘ごと抜き、こじりで敵を探り、敵に触れるや抜刀、片手で突く。 火村風  紙に灰を包んで投げつける。 逢意時雨  茶を所望して、その茶碗を投げつける。あるいは相手が茶碗をとろうとした手を取り、引き倒す。 鉄石  用心して石を袂に入れておき、機をみて投げつける。 遠方近所  敵と見られる人の側に行くことを肝要とし、花や掛物を見るふりをして側により、刀に手をかけたら、手をとって引き倒す。 外之剣  座っているときは、そこにあるものに気を配り、これを投げつける。 釣瓶返  座っていて、刀を帯びていない場合、相手が斬りかかってきて、抜刀して応じることができないときは、鞘と柄をとって鞘で受け、そのまま引き抜いて片手にて斬る。 智羅離風車  手拭や煙草入などを相手の顔に投げつけ、驚いたところを斬る。 以上十一本